株式会社日本総合研究所が2021年11月に公表した「日本経済展望」によれば、9月の鉱工業生産指数は、前月比▲6.9%と2ヵ月連続で低下しており、半導体不足や東南アジアからの部品調達の停滞による自動車工業の大幅な減産(同▲28.2%)が全体を下押ししているとの報告です。 

参考:株式会社日本総合研究所「日本経済展望」 
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/japan/pdf/12963.pdf

一方、個人消費については、9月以降、新型コロナの新規感染者数の減少や緊急事態宣言の解除などを受け、消費はやや持ち直しているとしながらも、全体的な景気としては一進一退との見解を示しています。 
こうした中、まだまだ業績低迷に伴う経費削減を迫られている企業も少なくないでしょう。 

この記事では、事業を行っていくうえで発生する経費の中で、固定費を削減する場合の適切な方法と注意点を解説していきます。 

固定費と変動費の違いとは

経費は固定費と変動費の2つに分類されますが、それぞれどのようなものでしょうか。 
固定費とは、事業を行っていくうえで売り上げの増減など、他の条件に左右されず一定に発生する費用のことを指します。 

仮に売り上げがまったくなかった場合でも一定額を支払わなければならないため、定期的に見直して、できるだけ抑えることが大切です。 
主な固定費には、給与・賞与・退職金・福利厚生などの人件費や家賃・光熱費などが該当しますが、業種によっては光熱費が変動費にあたる場合もあります。 

一方、変動費は生産量や販売量によって増減する費用のことです。 
具体的には、材料の仕入れ費用・梱包費・運送費・燃料費などがこれにあたります。 

経営分析において、損益分岐点がどのあたりか認知しておく必要がありますので、固定費 と変動費を分けて計算していくことが大変重要となります。 

固定費を削減する方法

前述したとおり固定費を見直して利益を確保することは会社経営では必要不可欠ですので、適切なコストカットの方法を見ていきましょう。 

労働時間の管理

固定費の中で人件費は非常に多く占めているものですので、コストカットに成功すれば成果もとても大きなものが期待できます。 

まず、残業時間についてですが、従業員の時間外労働を事前に申請する制度を導入するか、「NO残業デー」を設定するなどの対策が効果的です。 
どうしても会社のリソース不足で残業が発生している場合は、単純作業をアルバイトやパートに割り当て、正社員に技量を要する業務に専念させ効率化を図ることをおすすめします。 

光熱費のプランを見直す

2016年から電力市場が自由化され、既存の電力会社だけではなく「新電力」と呼ばれる新規参入の電力会社と契約ができるようになったため、価格競争が起こりました。 
また、ガスも2017年に電気同様、自由化になりましたので、電気代とガス代について各社の料金プランを比較し、割安な会社と契約し直し経費削減を図りましょう。 

車両に関わる経費の削減方法

営業車や配送車など、業務で使用する車両には、自動車税や駐車場代などの固定費がかかります。 
これらの車両をリースやレンタカーにすることで経費が削減できます。 
また、取引先が遠方でない場合は、電気自動車やハイブリッド車などのエコカーに切り替えればガソリンなどの燃料費を抑えられるでしょう。 

業務を電子化する

取引先との請求書や領収書を紙ベースで行っている企業は、依然として少なくありません。 
紙代はもとより印刷のインク代、郵送代などの費用がかかります。

また、それらを保管するスペースも必要となり、倉庫としての家賃も発生します。 
これらをすべて電子化すれば大幅に経費を削減できます。 
近年ではクラウドサービスの活用が促進されていますが、クラウドサービスを利用することで、重要書類など大切な書類を紛失するといったトラブルの防止にもつながります。 

固定費削減の注意点

固定費を削減すれば、利益の幅を広げられることが期待できますが、むやみやたらに削減すればいいというものではありません。 
それでは、固定費を削減する際の注意点を解説していきます。 

メリットとデメリットを考慮する

経費削減にあたり、まずは必要な経費と不必要な経費を割り出しておくことが大事です。 

たとえば、事務的業務を外注していた場合、その費用が高いからと翌月から外注を中止すると外注費は発生しませんが、その業務を自社の従業員が担うこととなり、その結果、残業費が増えたり、従業員の生産性低下を招くおそれがあり、経営悪化にもつながりかねません。 

このように結果を熟慮せずに経費削減を行ってしまうと、逆に経費が増えてしまったり売り上げが落ちたりしてしまう可能性があります。 
経費削減は、メリットとデメリットのバランスをよく考えたうえで取り組むことが大切です。 

従業員のモチベーション低下に注意する

経営者と従業員では、経費削減に対する意識は異なります。 
経営者は自社の財務状況を把握しており、経費削減を行うメリットを熟知しています。 

しかし実際には、経費削減が従業員自身に不利益であったり、所属部署に悪影響を与えるような場合は、削減の取り組みへのモチベーションは高まらないでしょう。 
従業員のモチベーションが下がってしまうと生産性の低下につながり、業績を悪化させてしまうおそれもあります。 
モチベーションの低下を防ぐためには、従業員の意向を汲んだうえで経費削減の必要性を十分に説明してから行うことが必要です。 

まとめ

経費削減は、その場しのぎの短絡的な目的で行うものではありません。
必要性とメリットを十分に理解したうえで、長期的に業績改善を目指す施策として取り組むべきでしょう。 

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