厚生労働省が2021年1月に公表した「令和2年(2020年)障害者雇用状況の集計結果」によると、2020年の障害者雇用数は約58万人(前年比3,2%増)、実雇用率2,15%(前年比0,04ポイント上昇)で、障害者雇用数・実雇用率ともに過去最高を更新したと報告しています。
参考:厚生労働省「令和2年(2020年)障害者雇用状況の集計結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/000747751.pdf
産業別で見ると、医療・福祉関係が2,78%で最も多く、農林漁業が2,33%、生活関連サービス業・娯楽業が同じく2,33%、電気・ガス・熱供給・水道業が2,31%、運輸業・郵便業が2,23%で、法定雇用率を上回っているとのことです。
医療・福祉関係が上位であったことについては、高齢化社会で人手不足が否めない業界であることに新型コロナウイルスの影響も相まった背景があったでしょうが、各企業が積極的に障害者雇用に取り組んでいることが見て取れます。
この記事では、企業が障害者を受け入れるときのポイントと注意点を解説していきます。
障害者を雇用する前にやっておくべきこと
障害者の方を受け入れる前には、知っておくべき知識の把握と適正な体制づくりが不可欠です。
まず、初めて障害者を雇用する場合は、ハローワークや人材紹介サービスなどに受け入れについてアドバイスをもらうことをおすすめします。
ハローワークでは、事業所に積極的に障害者を雇用してもらうため、職域開拓・雇用管理・職場環境整備・特例子会社設立などの相談を受け付けてくれています。
さらに、障害者の態様に応じた各種助成金(特定求職者雇用開発給付金・障害者雇用納付金制度に基づく助成金)についても説明してくれます。
また、民間の人材紹介サービスでも障害者の方を専門に扱っている会社もあり、障害者の採用に関するノウハウに長けていますので、相談してみるのもいいでしょう。
次に社員へ障害や接し方について学ぶ勉強会を開催することも大事です。
職場内で障害者の方がいる場合は、「何かお手伝いしましょうか」と、全社員が声掛けできるように意識付けをすることが大切です。
職場環境を見直して、必要であればバリアフリー化することで、事故やけがを防止する施しも必要です。
障害の特性によっては、業務マニュアルなどは小学生が読んでも分かる内容で整備しておかなければなりません。
何はともあれ、障害者の方が安心・安全の環境で活躍できる職場づくりを目指しましょう。
障害者雇用のポイント
障害者の方を受け入れる際は、障害別の特性を理解したうえで対応する必要があります。
以下に障害別のポイントを解説します。
視覚障害
視覚障害の方には、社内で何がどこにあるのか、丁寧に説明しておき、尚且つ覚えやすいレイアウトにしておくことが必要です。
また、読み上げソフトや点字ディスプレイなどの就労移行支援の必要があるのか、事前に確認しておきましょう。
聴覚障害
通常、社員は手話ができないことが多いので、筆談やSNSなどをうまく利用した体制を用意し、コミュニケーションを図るようにします。
先天性の聴覚障害の方の中には、読唇術を身に付けている人もいますので、どの程度コミュニケーションが取れるか、事前にヒアリングしておきましょう。
身体障害
椅子や作業台などの高さを変更するなど、安全に仕事ができるようなレイアウトに変更しておきます。
特に机の周りには、かばんやごみ箱などを置かないよう社員に周知しましょう。
内部障害
心臓や腎臓など、内臓の機能に障害がある方には、通院の有無を事前に確認しておきます。
また、ペースメーカーを使用している人には、高エネルギー電磁波を出す機械を避けた環境にしなくてはいけません。
家庭用電気機器であるIH調理器・IH炊飯器などもこれに当てはまりますし、携帯電話でもペースメーカーの部分から15cm離さなくてはいけませんので、細心の注意が必要です。
腎臓に障害がある方は、頻繁に透析通院する場合がありますので、事前にスケジュールについて相談しておきましょう。
精神障害
精神障害の方は疲れやすいことが多いので、短時間の仕事から始めて様子を見ながら徐々に勤務時間を延ばしていきます。
また、重大な判断や責任を持たせることは避け、ストレスを与えないように配慮します。
精神障害
曖昧な表現やアバウトなルールが苦手な人が多いので、ルールは細部まで明確にしておく必要があります。
業務の指示は1人から出すようにして、大勢の人が口を挟まないようにすることが大事です。
業務内容や職場内のポジション、仕事の優先順位などは文字や図で理解しやすいように説明しておきましょう。
障害者雇用の注意点
さて、次は障害者の方を雇用するときに注意すべきポイントについて解説します。
先に述べましたハローワークや人材紹介サービスなどから紹介があったときは、事前にその人に必要な配慮すべき内容を聞いておくことを忘れないようにしてください。
入社してからのヒアリングでは、事前準備が間に合わず、万全な安全が確保できないからです。
また、面接の際は健常者の場合と同じにしてしまうと、特に精神障害や知的障害の人は上手に話せないときがありますので、ざっくばらんな会話ができるような面談形式で行うといいでしょう。
長時間同じ姿勢でいることが困難な人や緊張が長時間続くことで極度のストレスを抱えてしまう人もいますので、面接の時間は短くして回数を増やすことで必要な情報を聞き取りましょう。
通院の状況や服薬のタイミングについても必ず確認してください。
今後、障害者の方に元気に働いてもらうためには、本人の健康維持を最優先にしなくてはなりません。
そして、いちばん重要なのは、その人が「何ができて、何ができないか」を把握することです。
社内の人間関係や物理的配置などを精査し、障害者の方がストレスを感じることがない職場環境を整える必要があります。
まとめ
冒頭に紹介した厚生労働省の集計結果ですが、企業規模で見ても大手企業にかかわらず、すべての企業規模で前年より増加しています。
新型コロナウイルスの影響が収束すれば、さらに企業の採用活動が活発化することでしょう。
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