発達障害とは、言語・コミュニケーション・社会性などの発達に何らかの特性(偏りや歪み)があることによって生じる不適応状態を指します。
発達障害にはさまざまな種類がありますが、主に「ASD(自閉症スペクトラム障害)」「ADHD(注意欠如/多動性障害)」「LD(学習障害)」の3種類に分類されます。
発達障害のある人の雇用に関しては、まだまだ充分とは言えないまでも、社会の意識の変化や法律の整備などによって少しずつ社会的支援が広がっているのも事実です。
この記事では、発達障害の人によくある職場のトラブルとその対処法方法について解説していきます。
発達障害を抱える方も、そうでない職場の周囲の方もきちんと理解したうえで対応していきましょう。
ASD/アスペルガー症候群の場合のトラブルと解決策
ASDの特性によって職場でトラブルになることがあります。
特性によって引き起こされるトラブルは、本人の努力だけで解決することは困難であるため、周囲の理解と協力が不可欠です。
ここでは、特性別によくあるトラブルのケースを示して説明していきます。
コミュニケーションが苦手なタイプ
ASDの人は、自分に興味があることを一方的に話したり、相手の話をまったく聞いていないような態度をとってしまうことがあります。
たとえば、自分が得意とする分野のことを話すと止まらなくなり、相手が興味を示さなくても延々と話し続けます。
その結果、職場で仕事が始まって話を中断しなかったり、上司や同僚の注意を聞かず孤立してしまうケースがあります。
自由に話してもいい休憩時間とむやみに話しかけてはいけない勤務中については、表や図で示すと理解しやすくなります。
社会人としての常識が理解できないタイプ
ASDの特性のひとつに社会常識を理解したり、良好な人間関係を築くのが苦手なためにトラブルになる場合があります。
職場での上下関係などを理解できずに敬語などを使い分けないため、周囲からは非常識な人と思われがちですが、本人にはまったく悪気はないのです。
そもそも本人には、人と同じ行動を取るとか、人の気持ちに配慮するといった意識がないことも多いのです。
このような場合は、言葉遣いや職場のルールなど目に見えない社会常識を分かりやすい文章や図を用いることで理解しやすくなります。
自己ルールを優先するこだわりタイプ
ASDの人は、一度決めたことをやり遂げようとするこだわりの強さがあります。
しかしながら、周囲の状況を無視し、自分の都合やルールを優先して周囲に迷惑をかけたとしてもまったく気にかけません。
したがって、自分の決めたスケジュールや手順などにこだわり、急な変更や他人の失敗を許せません。
このようなケースでは、本人の特性を理解して仕事の進め方を考慮する必要があります。
相手の都合でスケジュールが変更になったり、自分の仕事の手順が認められない環境では大きなストレスを抱えてしまいかねません。
ある程度、自分のペースで進めていける業務か、あまり変化がない仕事が向いています。
ADHDの場合のトラブルと解決方法
発達障害の方の中でADHDの特性によって職場内でトラブルになるケースがあります。
また、女性の場合は、男性と特性の現れ方が異なる場合があり、対応に注意が必要です。
自己中心タイプ
ADHDの特性である多動性や衝動性から、他人の気持ちよりも自分の言動を優先する傾向があります。
特に女性の場合は、タイミングを見てお茶を出したりお客様を案内したり、女性特有の「気配り」を求められることがありますが、それ自体に大きなストレスを感じている場合も少なくありません。
また、机の上がいつも乱雑であったり、グループで仕事ができないなどの問題行動が目立ち、トラブルになることもあります。
こうした場合では、周囲の人は「女性なんだから、それぐらいやってよ」などと要求することは難しいとの理解を示し支援することが大事です。
また、本人も必要以上に女性らしさを求められる職場の場合は、配置の転換を願い出るか、自分の個性が発揮できる仕事へ転職した方が良いかもしれません。
感情の抑制が苦手な激高タイプ
ADHDの人は、自分の感情のコントロールがうまくできず、些細なことでも感情が爆発してしまうことがあります。
職場では、上司も同僚もいさかいなく怒りをぶつけたり、外部のお客さんに対しても感情を抑えられない場合や、極端なときは仕事を途中で投げ出してしまうこともあります。
ADHDの人は、幼少のときからミスが多く注意ばかりされていたり、「怒りっぽい」など否定的な印象を与えている場合が多いことから、本人も劣等感を抱えていることがあります。
したがって、こうしたトラブルの際でもその場で頭ごなしに押さえつけようとすることは、かえって逆効果になる場合があります。
また、本人の感情が爆発する前にその場から離れて冷静を取り戻せる場所を事前に用意しておくといいでしょう。
細かいミスが多いそそっかしいタイプ
ADHDの特性である不注意や衝動性により同じようなミスが続いて職場でトラブルになる場合があります。
よくある問題行動としては、人の話を聞いていない、手先が不器用で字が汚い、頼まれた仕事をよく忘れる、気が散りやすく集中力が続かないなどが散見されます。
しかし、何度も同じようなミスを繰り返す場合であっても、感情的にりつけることは禁物です。
仕事に集中できるように1~2時間ごとに休憩時間を設けたり、指示されたことなどは必ずメモを取るように促します。
また、再三にわたって注意し続けるよりも、うまくできたことを褒めてやる気を引き出すことも効果的です。
ADHDの特性によるトラブル回避は薬物療法が有効
ADHDは、薬による治療効果が高いと言われており、職場内のトラブルが続き悩んでいる場合は、医師と相談して薬を使った治療を始めるといいでしょう。
まず、生活面の調整として、家族など周囲の人にも理解してもらい対応を変えてみるなどのサポートが必要になります。
家庭環境を調整しても状況が変わらない場合は、薬物療法を受けます。
それによって、ADHDの特性である不注意や衝動性などが軽減されていきます。
ただし、同じADHDの人でも体質などは人それぞれですし、特性の現れ方も多種多様なので、処方された薬ですぐに改善される人もいれば、少しずつ薬の量を増やしていくことで効果が出る人もいます。
薬物治療は、自分の状態や状況の変化をできるだけ詳しく医師に伝えることが重要です。
まとめ
発達障害を抱える方は、思春期前後になるとクラスメートなど周囲との「ずれ」や「違和感」を感じ始めることが多いと言われています。
しかし、社会に出て働くということは、さらに複雑な人間関係が求められるわけですから、自分が生きる社会で少しずつ学んでいく必要がありますが、特性がある人はそのスキルを身に付けることが非常に困難とされています。
紹介してきたトラブルを減らすためには、複雑な「社会ルール」として教えるよりも、シンプル化した「マナーとルール」というコンセプトで教えた方が理解しやすいでしょう。
「職場でのトラブルが多く転職したい」「周囲が自分を理解してくれない」などで悩んでいる方は、是非イーチリッチにご相談ください。
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