株式会社矢野経済研究所が2021年10月に公表した「人材ビジネス市場に関する調査を実施」によると、2020年度の人材ビジネス主要3業界(人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業)の市場規模は、事業者売上高ベースで8兆2,225億円(前年度比0,3%増)であり、内訳は人材派遣業が最も多く7兆9,400億円(前年度比0,9%増)、人材紹介業が2,520億円8前年度比18,2%減)、再就職支援業が305億円(前年度比23,0%増)であったとの報告です。
参考:株式会社矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2826
コロナ渦により人材紹介業市場がマイナス成長となるも、他の2業界が売り上げを確保したため、人材ビジネス業界全体では微増となっているとしています。
特筆すべきは、将来展望として2021年度の売上高について、あくまで見込みとしながらも、主要3業界で8兆6,410億円(前年度比5,1%増)という数値を示しており、市場拡大を予測しています。
この記事では、これから就職を目指す方や求人を行っていく企業の採用担当者に向けて、人材ビジネス業界を利用する場合のそれぞれのメリットを解説していきます。
人材ビジネスの種類と特徴
冒頭では人材ビジネス主要3業界と紹介しましたが、そのほかにも「人材コンサルティング」「人材広告業」などが存在しますが、ここでは実際に求人・求職活動を行う方に向けて、先の3業界に焦点をあてて見ていきます。
人材派遣業
人材派遣業は、求職者と求人を行う企業との仲介役として人材を派遣している事業です。
まず、求職者たちは人材派遣会社に登録し、その中から企業のニーズに合致する人材を派遣します。
派遣スタッフは、派遣先である会社で働くことになりますが、あくまで所属は派遣会社であり、会社の規定なども派遣会社のものに従うことになります。
また、派遣スタッフを受け入れた企業は、あらかじめ定められていた手数料を派遣会社に支払うことになりますが、その中から派遣スタッフに給与が支払われるビジネスモデルになっているのが一般的です。
人材紹介会社
一方で人材紹介業では、求職者と求人する企業の仲介役という意味では同様ですが、人材派遣業との決定的な違いは、紹介した求職者が求人を行っていた企業に直接雇用されることです。
手数料に関しては、やはり人材を受け入れた企業から人材紹介会社へ支払いますが、会社規定や紹介されたスタッフの給与支払いは受け入れ企業側のものが適用されます。
再就職支援業
再就職支援業が前者2業者と大きく異なる点は、求職者が会社の都合で転職を迫られていることです。
つまり、不況や災害などで会社がやむを得ず人員削減を行う場合など、その対象者にスムーズな再就職をサポートするサービスです。
したがって、手数料については「転職先企業」ではなく「人員整理を行った企業」が支払うことになります。
企業側のメリット
メリットに関しては、企業側、求職者側の双方に言えることですが、「ここの業者がいちばんいい」などの正解があるわけではなく、あくまで一般論となりますが、どの会社を利用するかは、現在自社(自分)が置かれている状況や業種、将来性などを緻密に考慮したうえで、最善の選択をしなくてはなりません。
それではまず、業種ごとの企業側メリットを見ていきましょう。
人材派遣会社
前述したとおり派遣スタッフは派遣会社に所属するため、各種社会保険・給与計算などの労務関係の手間がかかりませんし、1名の正社員を雇用するよりも人件費がかさみません。
また、あらかじめ契約期間を決めておくことができる場合もあるので、繁忙期など必要な時期に限って利用できる利点があります。
人材紹介会社
まず、ほとんどの人材紹介会社の料金体系が「成功報酬型」となっているため、初期費用などがかからず、人材を採用して初めて料金が発生する仕組みとなっています。
また、人材派遣会社と比較すると求職者一人ひとりの経歴・スキルなどの情報を詳細に至るまで把握していることが多いため、企業側が求める人材とのミスマッチが起こりにくいのが最大のメリットと言えます。
さらに、役員などの幹部や新規プロジェクト立ち上げのメンバーを募集する場合など、競合他社に知られたくないときは、企業側の希望で「非公開求人」として採用活動を進めていくことができます。
再就職支援会社
企業が業績不振のため、一方的にリストラを決行してしまうと、当然のことながら社員から猛烈な反発を受け、最悪の場合は訴訟沙汰に至ってしまうことも考えられます。
そのようなリスクを避けるため、どうしても人員削減を行わなくてはならない場合には、対象者を一刻も早く次の会社への転職に導き生活の安定を確保してもらう必要があります。
また、退職者としては相当な精神的ダメージを負っているわけですから、ここで支援サービスによる転職へのサポートを受ければ、本人の苦痛や不安を軽減できるでしょう。
さらに、人員整理を行った会社は厚生労働省の「労働移動支援助成金」という助成金が支給されます。
ただし、助成金の対象年齢は45歳以上となっていますので注意が必要です。
求職者側のメリット
さて、最後に求職者側のメリットを紹介します。
これから就活を行っていく人は、是非参考にしてみてください。
人材派遣会社
自分のライフスタイルに合わせて働けるので、自由度が高いというメリットがあります。
職種・勤務地・勤務時間などの希望を設定したうえで仕事を選べます。
また、1つの会社に留まるよりもさまざまな職種を体験する機会があり、複数の会社で働くことで、自らの社会性を向上させることができます。
正社員では入社できないような企業でも、貴重な経験を積めるチャンスがあるかもしれません。
人材紹介会社
これは企業側のメリットと重複してしまいますが、求職者と企業の情報をデータベースで構築してあるため、就職のミスマッチが起こりにくいシステムになっています。
また、応募・書類選考・面接・内定など就活にかかわるすべての過程でアドバイザーが手厚くサポートしてくれますので心強い存在となります。
意外と知られていませんが、「転職するか迷っている」という段階からアドバイスを受けられるサービスを行う会社もあります。
再就職支援会社
人材派遣業や人材紹介業の場合は、求人紹介が主流になりますが、再就職支援ですと担当カウンセラーによる本人の抱える悩みや不安に対し、精神的なサポートを受けることができます。
また、それと同時に本人の経歴やスキルを最大限に活かせるための研修を行うなど、就活にプラスになるサービスの提供もしています。
まとめ
新型コロナウイルスにより深刻な打撃を受けた日本経済ですが、企業が雇用に消極的となる反面、同一労働同一賃金制度が浸透してきている背景もあり、派遣スタッフなどは一人当たりの単価が上がったという側面もあります。
今後、企業の採用活動が活発化すれば、人材ビジネスの需要もさらに増えていくことでしょう。
これから就活を行う求職者の方も、求人を検討している企業の採用担当者の方も、是非イーチリッチにお問い合わせください。
理想の人材が理想の企業に入社するまで万全なサポートをお約束します。