近年、発達障害という用語はたいへんポピュラーなものになってきました。
かつては、発達障害というのは小児科の病気であり、病院で治療を施すというよりも、どちらかといえば福祉や教育の分野とみなされていました。

ところがここ数年、新聞やテレビなどのメディアで、成人期の発達障害に関する記事が取り上げられることが多くなってきたため、発達障害の専門医への受診が増えてきています。

発達障害のひとつの症状であるADHD(注意欠如多動性障害)の詳しい症状などは後述しますが、この特性を抱えた人たちの中には、職場での不適応が受診のきっかけとなっている人が意外と多いのです。

この記事では、ADHDの基本的な知識を解説したのち、この特性を抱えた人が仕事で困った場合の解決法を紹介していきます。

ADHDとはどんな病気か

「そわそわして落ちつかない」、「思いついたらすぐに行動に移ってしまう」、「人の話に耳を傾けず自分から一方的に話し続ける」、「忘れ物が多い」など、多動性・衝動性・不注意という特性があり、それによって日常生活に支障をきたすのが「ADHD」という発達障害のひとつです。

ADHDには特性の偏りによって、3つのタイプに分類されています。

多動性・衝動性優勢型

落ちつきさのなさ、衝動的な行動が目立つタイプです。

不注意優勢型

集中力が欠如していて、注意散漫で忘れっぽい特徴が目立つタイプです。

混合型

その名のとおり、落ちつきのなさと不注意が同じ程度で目立つタイプをいいます。
ADHDと診断されても、タイプが異なると症状もまったく違うので、感じる困難感も個人差が大きくなります。

なお、不注意は子供のころは見過ごされるので、大人になって不注意が許されない状況に置かれたときに、初めてADHDであることに気づく人も多いようです。

ADHDの特性により職場で起こりやすいトラブル

ADHDの特性からコミュニケーションにおける困りごとも起こりますが、ここでは業務に関わるよくあるトラブルを紹介します。

集中できずミスが多い

ADHDの方が仕事をするうえでの大きな困りごとは「集中できない」ことです。
本人は決して「適当にやればいい」と思っているわけではありません。

反対に「気を抜いてはいけない」「もっとしっかりやらなければ」と考えているのに、そんな気持ちとは裏腹に注意の制御が利かないのです。
集中できないと「相手の話を正確に覚えていられない」「指示されたことが分からなくなる」のような状況に陥るため、仕事に影響が出るようになります。

本人はきちんとやっているつもりでも、周囲から見れば「いい加減だ」「やる気がない」と思われ、人間関係も悪化してしまいます。

大事なことを先延ばしする

面倒なことや手間がかかることに取りかかるのを憂うつだと思うのは、誰にでも経験があるはずです。
しかし、ADHDの人はそのような傾向が非常に強く、そのうえ同じ状況を何度も繰り返す特徴があります。
新しいことや自分の興味があることに目を向けやすいため、大事な業務を進めなくてはならない状況であっても「締め切りまでまだ時間があるから」と、その仕事を停滞させたまま、いろいろなことに手を出してしまいます。

さらに「忘れっぽさ」なども加わり締め切りを守れないことが続くと、「期限を守らない人」とのレッテルを貼られ、期待されなくなります。

忘れ物・紛失物が多い

集中力が途切れやすく、人の話をよく聞いていられないという特性は、人との約束など要件を忘れやすいということにつながります。
また、整理整頓が苦手で部屋や机上などが乱雑になりがちという特徴も、忘れ物や紛失物が多いという特性に拍車をかけます。
散らかっているにもかかわらず、何気にどこかに置いて、その場所を忘れてしまうからです。
それが、取引先との契約書の控えであったり、会社の情報が書かれた重要書類などであった場合は、進退問題に発展してしまう可能性もあります。

ADHDの人が職場で困らないための対策

ADHDの困りごとを改善するための基本となるのは、生活の見直しです。
生活の中でできる工夫はいろいろありますが、大きく3つに分けると考えやすいでしょう。

環境の改善

ADHDの特性があると周囲の音などに気を取られやすく、作業を中断すると集中力を取り戻すのに時間がかかるといった問題があります。
対策としては、自分の近くで人が動くのが気になるのであれば、少し離れた場所で作業したり、ついたてを設置するなどの工夫をしましょう。

ただし、勝手な判断で行うと人間関係が悪化する可能性がありますので、必ず上司や周囲の人の許可をもらってから取り組むとよいでしょう。

行動パターンの改善

同じミスを何度も繰り返すのは、失敗する行動パターンを繰り返しているからともいえます。
したがって、結果を変えるためには、行動パターンを見直す必要があります。
たとえば、集中して人の話をきちんと聞けないことで指示された内容を忘れてしまうなどの場合は、必ずメモを取るようにします。
人は苦労して覚えたことほど忘れにくいものですから、何かを覚えるときにはからだを動かすようにします。
いわゆる「ひと手間」かけることにより、やるべきことを確実にこなせるようになることが狙いです。

意識の改善

部屋を片づけているときに見つけた本をそのまま読んでしまい片づけが終わらない、または不用意なひとことで相手を怒らせてしまう、このようなトラブルは無意識な行動が原因で起こりますので、無意識な行動を実行する前に意識してちょっと待つように心がけます。
その意識が行動パターンを変えることにもつながります。

まとめ

ADHDは薬物療法が非常によく効く病気だといわれていますが、この記事では自分なりの工夫で改善していく対策を解説してきました。
ADHDの人は、何か困りごとがあったなら自分で抱え込むのではなく、周囲の人に積極的に助けを求めることが大事です。
たとえば、上司からの指示事項については分かりやすい文章で示してもらう、または作業手順については図などを用いた理解しやすいマニュアルを作成してもらうことで、「人の話をきちんと聞けない」「忘れっぽい」などの特性で失敗していたことを解消できるでしょう。

ADHDを抱えている人の中で「就職したいが自分に合った仕事が何か分からない」「転職したいが就活の手順が分からない」などでお悩みがある方は、是非イーチリッチにご相談ください。
経験豊富な専門スタッフが、安心して働ける仕事探しを全面サポートいたします。