私たちは日常生活において、さまざまな場面で不安を感じています。
不安とは、喜び・悲しみ・怒りなどと同様に感情のひとつです。
「このあとどうなってしまうか分からない」「安全が確保されていない」というような状況に置かれたとき、心細くてドキドキしたりするのが不安という感情です。
願わくば、そのような感情を抱かずに穏やかに過ごしていきたいと考える人もいるかもしれませんが、もしも不安を感じることができなくなってしまったら、将来起こりうる危険に対して、準備や対策を何もせずに無謀な体当たりをすることになってしまいます。
不安を感じるからこそ、状況を警戒しつつ危険回避の対策などを練ることができますので、言わば不安とは自己防衛のための必要不可欠な感情だと言えるでしょう。
しかし、不安障害の人は特段の理由がないにもかかわらず不安が長く続いて、時には日常生活にも支障をきたしてしまうことがあるため、多くの方は専門医の治療を受けておられることでしょう。
この記事では、不安障害の方が就職前に注意しなければならない、合併・併発をしやすい疾患について解説していきます。
不安障害と最も合併しやすい「うつ病」
不安障害と最も合併しやすい精神疾患は、「うつ病」と言われています。
一生のうち一度はうつ病に罹る障害有病率が、一般の人が約10%であるのに対し、何らかの不安障害(パニック障害・社会不安障害・全般性不安障害・限局性恐怖症など)の人は、約40%という調査結果もあります。
なお、不安障害は比較的若年層で発症するケースが多いですが、うつ病については幅広い年齢層で発症していることから、不安障害を発症したのちにうつ病を併発するパターンが多いと言えるでしょう。
ただし、パニック障害に関しては、うつ病が先に発症するか、同時に発症するケースもあるようです。
不安障害にうつ病が併発した場合の特徴は、「非定型うつ病」であることが多いということです。
一般的なうつ病は「定型うつ病」と呼ばれ、常に気分が沈んだ状態が続きますが、「非定型うつ病」の場合は、気持ちが高揚する状況になると一気に症状が好転するという特性があります。
たとえば、職場では憂うつな気分が続き何もする気になれないような状態であったのに、退社後の会食や買い物などは普段どおりに楽しむことができます。
さらに、過食や過眠、拒絶されたことへの過敏な反応を示す場合もあります。
このような症状が現れたときは、就職後の業務に悪影響が出ますので、少しでも早く専門の医療機関で受診しましょう。
不安障害の人が陥りやすい「依存症」
「依存症」とは、特定の何かに心を奪われて「やめたくても、やめられない」状態を言います。
依存の対象となるものの具体例として、アルコールやギャンブル、高額商品の買い物、最近ではスマホ操作なども挙げられます。
これらの中で、不安障害の人が陥りやすいのは「アルコール依存症」と言われています。
ときには不安障害を発症する以前からアルコール依存症になっている場合もありますが、多くのケースは不安障害の特性である「不安」や「恐怖」を酒に酔うことで紛らわそうとして依存症に陥るパターンです。
もちろん、アルコールには不安や恐怖を和らげる作用がありますが、所詮一時凌ぎのため徐々に飲酒量が増えて依存症に至ってしまうのです。
アルコール依存症になってしまうと、常識的な飲酒量では済まなくなりますので、仕事や人間関係にも悪影響が出ます。
たとえば、二日酔いのまま作業をしてケガや事故を起こしたり、重要な約束を忘れたり、酷い場合は無断欠勤を繰り返すなど、もはや正常な社会生活ができない状態となるケースも珍しくありません。
万が一、アルコール依存症の症状がみられる場合は、不安障害と併せて治療の必要があります。
また、「ニコチン」や「カフェイン」などの依存症にも注意が必要です。
言うまでもなく、たばこは肺がんなどの重篤な病気の引き金になりますので、不安障害の人は吸わない方が賢明でしょう。
コーヒーの飲みすぎなどにも注意して、健康を維持ながら就職の準備をしましょう。
不安障害は複数の症状を併発しやすい
不安障害の人は「不安になりやすい」という気性が起因となっていますので、往々にして複数の不安障害を併発するケースも見受けられます。
「パニック障害研究センターからの論文集」によると、最も併発率が高いのは広場恐怖を伴うパニック障害で、何らかの不安障害を併発する割合は93,6%で、その内訳として特定の恐怖症は75,2%、社会不安障害は66,5%、全般性不安障害15%などとなっています。
参考:「パニック障害研究センターからの論文集」
https://www.fuanclinic.com/ronbun2/r_46.htm
不安障害の中でも、限局性恐怖症や社交不安障害は、大部分が思春期までに発症していると言われています。
これらの症状を早期に発見し治療することで、その後の他の障害を防ぐことができると考えられています。
しかしながら、実際には不安障害の受診率は20%程度で、初診の平均年齢は30歳代というのが実情のようです。
とにかく、最初に発症した不安障害を迅速に見つけて、適切に治療していくことが併発防止につながるでしょう。
まとめ
不安障害を抱える人が就職前に留意すべきことは、やはり規則正しい生活を心がけることです。
1日3食を規則正しく摂ることはもちろん、日中はできるだけ外に出て、人と会ったり、適度な運動をしてリラックスした状態を保つように工夫しましょう。
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